2018.10.01
皆さんこんにちは。東京浜松町/大門にあるALFフランス語学校です。
ブログではフランスやフランス語に関する様々な情報をお伝えしていきます。
今日は星の王子様の一節から。
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フランス語の本・・・を浮かべたときに「星の王子さま」が真っ先に浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
翻訳とは和訳、とはちょっぴり違いますよね。
"Le petit prince"というタイトルを「小さな王子さま」とせずに「星の王子さま」と翻訳したところから、この物語の魅力を膨らませてくれているように感じます。
今日は、
apprivoiserという単語の入った部分の翻訳を取り上げてみようと思います。
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王子様がであったキツネに一緒に遊ぼう、と誘ったあと、キツネはこう返します。
-Je ne puis pas jouer avec toi, dit le renard. Je ne suis pas apprivoisé.
puis はpouvoirの文語的で丁寧な言い回し。「僕は君とは遊べないよ。」
"Je nu suis pas approvoisé."受動態の文章ですね。
「僕はapprovoiserされていないから。」という感じです。
approvoiserをどう訳すか。です。辞書などで引くと「飼いならす」という表現がでてきますし、出版されている本の日本語訳のでもその訳が使われているものも多いです。
「飼いならされていないから。」
なんどなくしっくりくるような、こないような...ですよね。
私は小学生のころ、内藤 濯さんの訳の文庫を読んだのが、「星の王子さま」との出会いだったのですが、幼いながらにちょっぴり首を傾げた記憶があります。
飼いならす、というとてなづけたり、上下関係があるような感じがするからでしょうか。ではここに筆者が込めた思いはどのようなものだったのでしょうか。
「どういうこと?」ときいた王子様にキツネはこう答えます。
- C'est une chose trop oubliée, (dit le renard.) Ça signifie « créer des liens... »
「忘れられがちなことなんだけどね。」
「それは、"絆をつくる"ってことだよ。」と。
liensは 絆。 créerは「~を作る~を作り出す~を生み出す」。
時間がたてば自然に仲良くなる、というようなニュアンスでなく、時間や動力をかけて関係性を築いていく。というニュアンスでしょうか。
- On ne connaît que les choses que l'on apprivoise,
「≪飼い馴らさ≫なければ知っていることにはならないんだよ」とも言います。
毎日同じ時間に来ると、その時間になるとワクワクするだろ、なんてキツネの例え話も、
「そのバラが大切なのは、あんたがそのバラに時間を割いたからだよ。」という表現も、筆者が言おうとしているのは一貫して同じことのような気がします。
皆さんはこの単語をどのように訳しますか?
皆さんなら、approvoiserにどんな言葉を重ねるでしょうか?
そんなことを考えるのも翻訳のおもしろさですね。
私は、内藤 濯さんは、あえて「飼いならす」という言葉に訳しとどめたのではないかな...と想いを馳せたりしてしまいます。それぞれがそのニュアンスを物語の中で感じ取り、目に見えない、大切なものを感じ取りゆけるようにーというのは深読みのしすぎでしょうか?
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いかがでしたでしょうか?
それでは次回をお楽しみに!